Design Notes of STRAP ZIP WALLET
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財布をデザインしていて、ふと思った。
最後に現金を使ったのは、いつだっただろう。
キャッシュレスが当たり前になった今でも、旅先で、ふと入った店が現金しか使えないことがあります。
そういう店に限って、昔ながらの良さが残っているから、財布はまだ手放せません。
これまでいくつもの財布を使ってきて思うのは、
使いやすいだけでも、見た目がいいだけでも足りないということ。
日常的に、ほぼ無意識に使うものなので、どこかに引っかかりがあると、日々の中で小さなストレスになります。
年齢を重ねるほどに、支払いの所作にも意識が向くようになり、
使い込まれすぎた財布を取り出すと、わずかに気持ちが沈むことがあります。
普段はバッグの中に収まっているのに、
ふとした瞬間に人の目に触れる。
とても個人的なものなのに、どこか見られている感覚。

もうそろそろ、ひとつのものを長く使いたいと思い、
納得のできる理由のある素材で、自分の一番使いやすいと思うじかたちを作りました。
選んだのは、デュプイ社のマロカーフというレザーです。
瑪瑙(メノウ)と呼ばれるこぶし大の石で表面を磨き、艶を出し、さざ波のような繊細な型押しを施したフランスらしいカーフ。
使うほどに、静かな艶が立ち上がってきます。
いわゆる“味”とは少し違う、品が滲み出てくるような艶の変化です。
使用して2年ほどになりますが、多くのものが、使うほどに価値を落としていく中で、それとは逆の方向に向かう感覚があります。
時間とともに、少しずつ良くなっていくような。
そういうものに仕上がっていると思います。